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荒木組の博士 —第3回—

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前回は、長江さんが受賞した論文のテーマとなった研究内容「移動体測量を使ったインフラのメンテナンス作業に関する基礎的研究」についてお話を伺いました。このほかにも地道に研究活動に取り組んでいたようです。

第3回 ―ドローンで挑んだ堤防測量の高精度化

編集部(以下、編):ほかにも研究に取り組まれていたそうですね。どのような内容か教えてください。

長江さん(以下、長江):ドローンを活用した堤防の地形測量に関する研究に取り組みました。ドローンを使って、堤防の三次元地形を正確に測量するための技術検証です。

ドローン測量は航空測量の技術を使っているのですが、一般的に堤防は高低差があり、真上からの撮影だけでは正確な地形データが得られないという課題がありました。

編:ドローンを使っても、測量に限界があるのですね。

長江:はい。上空からの撮影では、斜面や複雑な形状が再現しきれないのです。そこで、斜めからの撮影や撮影経路の工夫、画像解析ソフトでの補正など、現場での調整を重ねながら、どのように精度を高められるかを研究しました。

編:どこの現場で行われたのですか?

長江:岡山県倉敷市船穂町の築堤護岸工事現場です。国交省から「堤防の高低差を正確に測る方法を検討してほしい」と相談があったことを、ほかの院生から聞きました。うまくいくかどうか分かりませんでしたが、チャレンジしてみようと取り組み始めました。

編:測量はどのように行われたのですか?

長江:ドローンにカメラを搭載し、複数の角度から堤防の地形を撮影しました。その写真を3Dモデルに変換し、精度を検証。上空からだけでなく、斜面を捉えるために飛行ルートの設定や高度調整も工夫しました。

編:精度を検証する際のポイントは何ですか?

長江:写真測量の再現性ですね。堤防の法面(※切土や盛土によって造られた人工的な斜面)部分をはじめ、測量部分をどれだけ正確に表現できるかが課題でした。

編:現場で得た成果はどう評価されましたか?

長江:最終的には、従来のドローン測量よりも高い精度でデータ取得ができました。測量が困難だった現場でも、ドローンを使って安全かつ効率的に作業できることが確認できました。

編:社内での反応はいかがでしたか?

長江:当時、ドローンを業務に使うという発想は土木業界では既に常識となっていたので、地道に実績を積み重ねて、「使える技術」として社内に浸透させていきました。

編:今回の研究を通じて、どんなことを感じましたか?

長江:「新しい技術は自ら体験し、工夫して課題を解決することに意味がある」と実感しました。現場から出た課題を研究で解決し、それをまた現場に戻す。このサイクルが大切だと思っています。

―次回は長江さんの研究活動による社内外への影響や、今後の展望についてインタビューしていきます。