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荒木組の博士 —第4回—

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これまで3回にわたって、長江さんの研究活動について紹介してきました。最終回となる今回は、研究活動が社内外へ与えた影響や、今後の展望についてお話を伺いました。

第4回 ―社内外へ広がる、ICT施工のこれから

編集部(以下、編):これまでの研究活動が、社内でどのように生かされていると感じますか?

長江さん(以下、長江):一番大きかったのは、若手社員の意識が変わってきたことですね。最初は「ICTって何?」という状況だったので、若手社員を集めて研修を開催しました。

編:どういう内容の研修をされたのですか?

長江:まずは、「i-Construction」、「ICT」を理解してもらうようにしました。技術を扱えるようになるには、知識と実践スキルの両方が必要です。そこから「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が進むとどうなるのかといった話や、大手企業におけるロボット導入の事例などを紹介しました。

編:若手社員の皆さんの反応はどうでしたか?

長江:みんな、興味を持って熱心に聞いてくれました。今では自分で調べたり、相談にきてくれたりするようになりましたね。

編:先日、土木部の岡田所長にインタビューをしたのですが(リンク記事参照)、新しい技術をどんどん取り入れていきたいとお話されていました。それは長江さんの研修がもとになっているのですね?

長江:そうだとうれしいですね(笑)。でも、若手社員から技術的な相談を継続的に持ちかけられるので、研修の効果はあったと思います。

編:特に印象に残っている変化はありますか?

長江:例えば、若手から「この現場にICTを使えませんか?」と積極的に相談してくるようになったことです。「技術に触れることが当たり前」という風土が少しずつ育ってきていると感じます。

編:会社全体としての変化もありましたか?

長江:そうですね。以前はICT施工も外注が前提でしたが、今では「できることは内製化していこう」という方針も強まり、社内に技術が蓄積され始めています。人材育成の面でも大きな意味があると思っています。

編:社外への発信も積極的にされていますよね?

長江:はい。大学院での研究を通じて、国土交通省や大学、ほかの建設会社との接点も広がりました。技術展示会に積極的に参加したり、講演で講師として登壇させていただいたりすることもありました。

編:そこまで活動されているのはすごいですね。

長江:私も最初は戸惑いましたが、外の世界を見ることで「自分たちができること」の価値を改めて感じました。中小企業でも、現場で得た知見を発信すれば、社会に貢献できることはたくさんあると実感しています。

編:とはいえ、苦労も多かったのでは?

長江:苦労しかなかったですね(笑)。大学院への進学も研究活動も、仕事と両立しながらすべて自分でやるしかなかった。それだけに、身に付いたものは大きかったです。

編:今後、どのようなことに取り組んでいきたいですか?

長江:大学院で研究して論文を書いて、卒業がゴールではなく、卒業して初めて研究者になったと思っています。今回の研究はあくまで「基礎的な検証」でした。研究者としては、ここからが本番だと思っています。今後は、最新の情報を自ら進んで取り入れながら、現場での応用や制度化を視野に入れた実践フェーズに移っていきたいです。あと、論文や技術情報の発信も続けていきたいですね。

編:若い世代への期待もありますか?

長江:あります。私のように、「1社でずっと仕事をしてきた」人間が外の世界を見ることで視野が大きく広がったように、若手にもぜひ外に出て学んでほしいと思っています。環境が変わると、思考も変わりますから。

編:今後の荒木組の技術展開に向けて、ひと言いただけますか?

長江:荒木組は高い現場技術を持つ一方で、まだ表に出ていない力もたくさんある会社です。だからこそ、これからは技術を「発信」し、「育てる」ことが重要になると思います。特に、ICT施工やインフラDXといった分野はこれからの建設業を支える柱になるはずです。

編:最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。

長江:新しい技術に対して最初は抵抗もあると思います。でも、それを越えて取り組んだ先には、確かな手応えが待っています。私自身がそうでしたし、これから挑戦する人たちの背中を押せる存在でありたいと思います。

編:貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

荒木組では、ICT施工をはじめとした建設分野のDX推進に加え、ロボット技術などの最新技術も積極的に検証しています。これからの未来を支える技術開発に、ぜひご期待ください。