連載
新人所長にインタビュー ―土木部 岡田所長編 第4回―
建設DXへの挑戦編③|「3Dプリンタ」で変わる現場
旭川の堤防工事にデジタル技術を導入し、「土木の未来」に挑戦している岡田所長。これまで本シリーズでは、さまざまなDXの取り組みを紹介してきましたが、今回は「3Dプリンタ技術」にフォーカスします。実際に現場で使用したことで、何が変わったのか。アラキズム編集部が詳しくお話を伺いました。

これが3Dプリンタで作成した資材です
編集部(以下、編):旭川の堤防工事で「3Dプリンタ」を使って構造物を造ったと伺いました。土木の現場で3Dプリンタを使用するのは、かなり珍しい試みですよね?
岡田所長(以下、所長):そうですね。荒木組では初めての取り組みです。今回造ったのは、大型ブロック端部に施工する「端止め」と呼ばれる構造物です。3Dプリンタといっても、樹脂ではなく特殊なモルタルを使っていて、層状に積み上げていきます。見た目は、生クリームを絞り出すように、にゅるにゅると出てくるイメージですね。

大型ブロック端部に施工した端止め
編:生クリームですか(笑)。それだと強度が少し心配になりますが…。
所長:そこはよく聞かれるんですが、実は通常のコンクリートと同等、もしくはそれ以上の強度があります。加えて、付着性や比重についても問題がないことを証明し、発注者の許可も得た上で導入しています。
編:従来の工法と比べて、どんなメリットがありましたか?
所長:一番大きいのは、スピードと安全性ですね。足場を組み、型枠を組み立てるなどの工程を経て、これまでは準備から施工まで9日ほどかかっていた作業が、3Dプリンタではわずか3時間で完了しました。
編:9日が3時間に!かなりの短縮ですね。
所長:そうなんです。さらに、安全面でも大きなメリットがあります。本来であれば、足場を組んで作業に入るため、現場では足場屋さんや大工さんなど、複数の作業員さんが同時に作業するため、どうしても危険性が高くなります。3Dプリンタの場合は、ブロック据付と同じメンバーで完結できるので、作業の簡素化にもつながりました。
編:コスト面についてはいかがですか?
所長:単体でみると、確かに高く感じるかもしれません。ただ、足場のレンタル費用や人件費、そして工期短縮まで含めて考えると、トータルでは十分にメリットがあります。足場が不要になることで、現場を広く使えるようになり、搬入などの制約が軽減した点も大きかったですね。

端止めをクレーンで吊り下げて設置していきます
編:そもそも、この技術を導入しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
所長:実は、別の現場で他社さんが採用しているのを、こっそりと見に行ったんです(笑)。それを見て「これはおもしろい!現場でやってみたい」と思ったのがきっかけですね。ただ「新しいから導入する」というだけでは意味がありません。3Dプリンタは形状を自由につくれる点が大きな魅力ですが、一方で図面をもとに、どこに適用すれば最も効果的かを見極める必要があります。
編:なるほど。図面を見て「ここで使える」と気付くためには、経験やセンスも求められそうですね。
所長:もともと3Dプリンタは、形が複雑で型枠を組むのが難しい場所で使われることが多いです。例えば、災害復旧のようにスピードが求められる場面でも、オーダーしてから最短1〜2週間で納品できるので、かなり重宝されています。だからこそ、そういった特性を踏まえて、自分たちの現場にどう当てはめるか。そこを発想できるかどうかが大事だと思います。
編:今後も導入していきたいですか?
所長:はい。作業時間の短縮や安全性の向上という点でもメリットが大きいので、今後も積極的に活用していきたいと考えています。
編:ありがとうございました!
\編集部より/
本シリーズでは、若手所長として現場をまかされた岡田さんの挑戦を追ってきました。タイトな工程の中での施工管理、チームにまかせるマネジメント、そして、今回のような新しい技術への挑戦。その一つひとつに共通していたのは、「どうすればこの現場がより良くなるか」を考え続ける姿勢でした。新しい技術も、働き方の工夫も、ただ取り入れるだけでは意味がない。現場ごとに最適な形を見極め、判断し、実行していく。その積み重ねこそが、現場を動かす“采配”なのかもしれません。
次回は、1年間の所長経験を終えた岡田さんに、この現場で得た気付きやこれからの展望について伺います。