連載
建築施工現場の舞台裏に迫る ―医療施設増築工事編 Vol.3―
建物の強さを支える「鉄筋」。コンクリートを流し込めば見えなくなる部分だからこそ、そこには一切の妥協が許されないプロの仕事があります。今回も工程管理を務める八木さんに「鉄筋工事」の施工管理についてお話を伺いました。

編集部(以下、編):今日は朝からクレーンがフル稼働ですね!
八木さん(以下、八木):迫力ありますよね。鉄筋を組む「鉄筋屋さん」と、クレーンを操作する「オペレーターさん」は別会社ですが、無線で「あと少し右」、「ゆっくり降ろして」と声を掛け合いながら、常に連携して作業を進めています。
編:ひとつの会社だけで工事を進めるわけではないのですね。現場には鉄筋がたくさん置かれていますが、これらは現場で切断したり接合したりするのですか?
八木:いえ、基本的には加工場で図面通りに加工されたものが現場に届きます。予備はほとんどありません。材料費にも関わりますし、何より「図面通りに完璧にそろえる」のがプロの仕事ですね。足りなくても余ってもいけない、緻密な世界ですね。
編:今、組んでいるのは「梁(はり)」の部分ですよね。よく見ると、鉄筋が少し浮いているように見えますが…。
八木:そうなんです!実は鉄筋は、コンクリートの中で適切な位置になるよう、“浮かせた状態”で固定しているんです。下に「ドーナツ」と呼ばれるスペーサーを挟んで、コンクリートを流した時に鉄筋がちょうど真ん中にくるよう調整しています。

鉄筋を浮かせた状態で作業が進められています

鉄筋同士はこのように溶接されています
編:なぜ浮かせる必要があるのですか?
八木:鉄筋がコンクリートの表面に近すぎると、雨水や空気の影響でさびやすくなり、建物の耐久性が落ちてしまうんです。そのため、鉄筋のまわりに必要な厚みのコンクリートを確保する「かぶり厚」を均一に保つことが、とても重要なんですよ。長く安全に使える建物にするための基本ですね。
編:現場管理は、広い現場を何度も往復されていますが、どんなところをチェックしているのですか?
八木:一番大事なのは「安全」です。特に高所作業では、安全帯(フルハーネス)を正しく着用しているか、フックを確実にかけているかを厳しく確認しています。
編:職人さんからすると、「少し移動するだけだから」と気が緩みそうな場面もありそうですね。

取材中も協力会社さんからの相談に応じる八木さん(手前)
八木:そうですね。職人さんも人ですから、効率を優先したくなるときはあると思います。でも、そこをあいまいにしないのが僕たち施工管理の役目です。一瞬の油断が大きな事故につながることもあります。だからこそ、職人さんの命を守るために、現場を何度も巡回しながら、安全確認や指導を徹底しています。
編:この現場は、稼働中の大きな病院のすぐ隣ですよね。音や振動にはかなり気を使われているのでは?
八木:おっしゃる通りです。入院されている方や利用者の皆さまへの配慮は最優先です。例えば、型枠を解体する際も、できるだけ音や振動を抑えられる特殊な道具や工法を選んでいます。
編:工法まで変えているのですね。
八木:はい。「いつも通り」のやり方ではなく、現場の環境に合わせて最適な方法を考える。これも荒木組のこだわりです。社長からも「地域の方に笑顔で接しよう」と言われていますし、街の一部として受け入れていただける現場でありたいと思っています。今日は1階で鉄筋を配置しながら溶接作業を進めていますので、その様子も見てみましょう。

ここがコンクリートを流し込む土台部分になります
編:現場の内側まで見せていただくと、普段見えない部分の仕事がよく分かりますね。この木枠の中に、今作業されている鉄筋を入れて、コンクリートを流し込むのですね。
八木:そうです。この木枠は大工さんが図面をもとに組み上げています。
編:この木枠を支える支柱などの資材も、大工さんが手配されるのですか?
八木:いえ、資材の手配は荒木組の施工管理の仕事です。設計図から必要な数量を拾い出して準備します。入社3年目くらいから、こうした積算や手配もまかされるようになりますね。
編:かなり責任の大きい仕事ですね。
八木:もちろん責任はありますが、基本となる計算方法がありますし、現場所長が必ず確認してくれるので安心ですよ。

編:今の現場のように、1階、2階と複数のフロアで工事が進んでいる場合、現場社員の皆さんは各階で担当を分けて管理しているのですか?
八木:この規模であれば、現場社員全員が全体の工程を把握しています。協力会社の職人さんも多くて50〜60人程度なので、全体を見ながら対応できますね。もっと大規模な現場になると、担当が細分化されます。
編:今日はありがとうございました!
八木:こちらこそありがとうございました。内装工事が始まると、また現場の雰囲気も変わってきますので、ぜひその頃にも取材に来てください!