連載
土木施工現場の舞台裏に迫る ―「百間川橋耐震補強工事」編 Vol.5―
いよいよ佳境を迎えた、国道2号・百間川橋の耐震補強工事。第5回は、橋の安全を支える重要設備「落橋防止装置」の品質検査と取り付け工事の様子をリポートします。
落橋防止装置|品質検査
落橋防止装置の品質検査では、表面の仕上がりだけでなく、溶接部分の内部に傷がないかまで徹底的にチェックします。この検査では、目視では発見できない微細な欠陥まで検出することが可能です。判定基準は国の規格によって厳格に定められており、たとえわずかな傷であっても、基準値を超えれば合格とはなりません。もちろん、本番前には協力会社さんとともに入念な自主検査を実施済み。こうした事前準備を重ねているからこそ、本番検査でもトラブルはありません。

超音波を用いて、品質検査をする機械
当日の検査を取り仕切ったのは栗原所長。今回は検査官と現場をオンラインでつなぎ、リアルタイムで状況を確認しながら検査が進められました。画面越しでも正確な情報を伝えるためには、安定した通信環境が欠かせません。映像が途切れてしまえば、品質を正しく証明できなくなるためです。そのため、事前に電波状況や通信状態を何度も確認し、本番に備えました。

スマートフォンで現場の映像を共有しながら、検査担当者の指示に従って確認を進めます

協力会社の皆さんと連携しながら、スムーズに検査を進行
こうした丁寧な準備の積み重ねにより、検査は滞りなく終了。通信トラブルも発生することなく、装置の品質は無事に承認されました。
落橋防止装置|取り付け工事

品質検査を終えた落橋防止装置は、溶融亜鉛(ようゆうあえん)メッキ※にドブ漬けし、輸送されます
※溶融亜鉛メッキ:鋼材を溶かした亜鉛に浸し、腐食を防ぐ保護膜を形成する防錆処理のこと。
国道2号という主要幹線道路の通行を止めることなく、安全かつ確実に巨大な「落橋防止装置」の運搬・取り付けを可能とする「システム足場」。その機能をフル活用した取り付け工事の様子について、栗原所長に伺いました。

システム足場の上に設置された専用レール
編集部(以下、編):システム足場の上にレールが組まれていますね。これで落橋防止装置を運ぶのですか?
栗原所長(以下、所長):はい。このレールは、重さを分散させるために現場で組み上げたものです。運び込む落橋防止装置は、最大で1.7tにもなります。重さが1カ所に集中すると足場に大きな負担がかかってしまうため、複数の支点で荷重を受け、「点」ではなく「面」で支える構造にしています。
編:1.7t…。想像以上の重量ですね。それをどうやって動かすのですか?
所長:ローラーコンベアのような仕組みを使い、最終的には人の手で押して移動させます。従来は道路を規制し、橋の上から装置を吊り下ろして設置していました。しかし、この方法なら、道路規制を行うことなく、地上から安全に装置を搬入できるんです。

直進時は細心の注意を払いながら、人の手で慎重に押していきます

レールが使用できない場所では、滑車を使って持ち上げながら移動させます

レールの上をゆっくりと押し進め、設置場所まで運びます
編:道路規制を行わないメリットは大きいですが、その分、準備も大変だったのではないですか?
所長:そうですね。事前に国土交通省へ施工計画書を提出し、緻密な計算書を添えて承認を得ています。「どのような力が加わっても、この足場で十分に支えられる」ことを証明しなければなりませんから。
編:実際、計画通りに進みましたか?
所長:はい、計画通りに進みました。初めての試みだったこともあり、「本当に計算通りに動くのか」というプレッシャーは相当大きかったですね。もし、トラブルが起きれば、道路規制が必要になるだけでなく、工期にも影響し、多くの方にご迷惑をおかけしてしまいます。だからこそ、実際に1つ目の部材運搬完了時は、「よし、やった!」という大きな手応えを感じました。
編:無事に、道路規制を行わず工事が遂行できそうですね。
所長:相手は国道2号です。ここを通る多くの人の流れを止めたくありませんでした。だからこそ、道路規制を行なわずに工事を進める方法にこだわってきたんです。あとは、このまま無事故で最後まで工事を完了させること。それに尽きます。

こちらが取り付けられた落橋防止装置

若手社員が率先して清掃を行い、整理整頓の行き届いた現場環境を維持していました
厳格な品質検査、交通への影響を最小限に抑えるための創意工夫、そして「絶対に無事故で終える」という強い使命感。目に見えない部分にこそ、土木技術者たちの確かな技術力と責任感が息づいていました。