連載
建築施工現場の舞台裏に迫る ―医療施設増築工事編 Vol.4―
医療施設は人の命や健康を支えるさまざまな設備が設置される特殊な建築物です。そのため、一般的な建物以上に高い施工精度と緻密な工程管理が求められます。
コンクリート打設、鉄筋工事を経て、建物はいよいよ内部の仕上げ工事へ。多くの協力会社さんと連携しながら、ミリ単位の精度で工事が進められています。今回も、工程管理を務める八木さんに、医療施設ならではの内装工事の難しさや現場での取り組みについて伺いました。

八木さんに内装現場を案内していただきました
編集部(以下、編):前回取材させていただいたときと比べると、壁が立ち上がり、空間の形がはっきり見えてきました。現在はどのような管理や調整を行なっているのでしょうか?
八木さん(以下、八木):ひと言でいうと「現場全体の総括」です。壁の位置を決めるための間仕切りの墨出し(印付け)から始まり、各工事の進捗を確認しながら、協力会社さんと連携して工程全体を調整しています。
編:内装工事の段階になると、多くの職人さんが現場に入るのでしょうか?
八木:そうですね。内装工事も1社だけで進めるわけではありません。業種ごとに専門性を持った協力会社が集まり、それぞれの職人さんたちと進捗を確認しながら工事を進めていきます。関わる人数が増えるほど、工程管理や調整の重要性も高まります。

内装や設備など、さまざまな職種の職人さんが現場を支えています
編:医療施設ならではの難しさはありますか?
八木:ありますね。医療施設は人の命や健康を支えるさまざまな設備が設置される建物ですので、内装工事も非常に複雑になります。例えば、レントゲン室やCT室では、放射線が外部に漏れないよう、壁に鉛を含んだ「鉛ボード」を施工します。部屋の用途によって使用する建材が大きく異なるほか、給排水や電気設備の配管も一般的な建築物より複雑です。それらすべてが図面どおりに、かつ正しい順序で納まるよう管理する必要があります。

完成後は見えなくなる天井裏。多くの配管や電気配線が張り巡らされています
編:工事では「順番」が重要なのですね。
八木:その通りです。どの工事を先に行い、どの工事を後にするのか。その組み立てを間違えると、後から「エレベーターが入らない」、「資材の搬入経路が確保できない」といった問題が起こることもあります。こうした工程を適切に組み立てるには、現場全体を立体的にイメージする力が欠かせません。私自身も、現場の流れをきちんと理解できるようになったのは入社3年目ごろでした。平面図を見ながら頭の中で立体的な完成形を描けるようになるには、やはり数年の経験が必要だと感じます。
編:仕上げ工事が進む時期は特に、プレッシャーも大きくなりそうですね。
八木:そうですね。躯体工事(建物の骨組み)が終わり、内装工事が始まると、多くの職種が同時に現場へ入るため、工程管理はより複雑になります。限られた工期の中で工程を調整しながら、仕上げの隙間や床・壁紙の施工状態など、細かな部分まで確認しなければなりません。完成が近づくほど手直しの余裕も少なくなるため、より高い精度が求められます。

取材中も、現場からの確認や調整の電話が次々と入っていました
編:お施主様とのコミュニケーションで、意識していることはありますか?
八木:現場の形が見えてきた段階で、お施主様に実際の現場を見ていただく機会を設けるようにしています。図面だけでは分かりにくい部分も、現場を見ていただくことで安心していただけますし、完成までのイメージを共有しやすくなります。お互いに意見を伝えやすくなり、より良い建物づくりにつながると考えています。
編:近年は資材価格の高騰や納期の長期化も続いていますが、現場ではどのような影響がありますか?
八木:例えば、照明器具や設備機器などは、納期が読みにくくなることがあります。そのため、工程に影響が出ないよう、早めの発注や継続的な納期確認を徹底しています。ただ、最終的に大切なのは、図面どおりに確実に施工することです。一つひとつ丁寧に確認を重ねながら、お施主様や協力会社さんと密にコミュニケーションを取り、品質を確保していくことを心がけています。
複雑な工程を整理し、多くの職人さんをまとめながら、高度な機能が求められる医療施設を形にしていく八木さん。経験に裏打ちされた判断力と着実な確認作業、そして多くの人との信頼関係によって、安全で品質の高い建物を生み出しています。