連載
建築施工現場の舞台裏に迫る ―岡山ガス株式会社倉敷営業所建替工事編 Vol.1―
実際の建築現場を着工から完成まで追いかける「建築施工現場の舞台裏に迫る」シリーズの新たな章がスタート。今回の舞台は、倉敷美観地区のほど近くで始まった、岡山ガス株式会社倉敷営業所の建替工事現場です。第1回は、工事が始まったばかりの現場で、所長と次席の役割分担やチームづくり、この現場ならではの工事のポイントについて、お話を伺いました。

今回お話を伺った(左から)村松所長と高橋さん
編集部(以下、編):こちらの現場では、村松さんが「所長」、高橋さんが「次席」を務められていますが、それぞれどのような役割分担をされているのでしょうか?
高橋さん(以下、高橋):大きく分けると、予算の決定や協力会社さんとの最終的な金額調整など、お金に関わる部分は所長が責任を持って判断しています。一方で、お客様や設計事務所との打合せ、現場管理、工程の組み立て、施工図のチェックなど、現場を動かしていく日々の実務は、基本的に私がまかせてもらっています。
編:お金に関する最終判断は所長が担い、それ以外の現場運営はほぼ次席が担当されているのですね。想像以上にまかされる範囲が広くて驚きました。次席は単なる「所長の補佐」ではなく、現場を動かす「実働リーダー」なのですね。
高橋:はい。特に一番時間を取られるのが施工図の図面チェックです。協力会社さんから上がってきた図面が本当に施工できるのか、設計図との整合性は取れているのかを確認します。例えば、扉を1枚取り付けるだけでも、外壁や内装との納まり、建物全体との関係性まで考えなければなりません。1枚の図面だけでは判断できないので、関連する図面を何枚も見比べながら確認します。長いときは丸1日、図面と向き合うこともあります。ここでミスがあると現場が止まってしまうため、責任は重大ですが、自分で納まりを考え、きれいに形になったときは本当におもしろいですね。
編:責任が大きい分、プレッシャーもありそうですね。そんなとき、所長はどのようにサポートしてくれるのですか?
高橋:村松所長はとにかく「チームでものづくりをしたい」という考え方なんです。現場というと、所長がトップダウンで指示を出し、若手がそれに従って動くイメージがあるかもしれませんが、全然違うんですよ。村松所長は自ら現場に出て一緒に作業をされますし、工程を組むときも、みんなで意見を出し合いながら進めています。僕が図面チェックで「ここはどう納めるのがいいだろう?」と悩んだときも、ただチェックして指摘するのではなく、一緒に考えてくださる存在です。まさに最高の「アドバイザー」ですね。何でも相談できるので、本当に心強いです。
村松所長(以下、所長):僕が目指しているのは、全員がごく自然に助け合えるチームです。誰か一人に過度な負担が集中するような現場には絶対にしたくありません。現場って、本当に「所長の色」ひとつで雰囲気も成果も大きく変わるんです。だからこそ、普段からコミュニケーションを取りやすく、お互いが困りごとや課題をオープンに相談できる環境をつくることを大切にしています。その方が結果的に良いものづくりにつながると考えています。
編:なるほど。チーム全員で現場をつくり上げていくという考え方が、現場全体に浸透しているのですね。ところで、こちらの現場は、岡山ガスさまの敷地内で工事が進められています。すぐ近くでお客様が業務をされている環境ですが、現場を進める上で特に意識されていることはありますか?
高橋:一番気を付けているのは、お客様への配慮です。今回は、お客様が普段駐車場として使われているエリアを工事エリアとしてお借りしているので、「業務の妨げになっていないか」、「ご迷惑をおかけしていないか」を常に意識しています。だからこそ、普段以上に気を引き締めて現場を管理しています。
編:あと、特徴的だと感じたのが、現場事務所が1階に設けられていることです。一般的には2階に設けるケースが多いですよね?

こちらが、1階に設けられた現場事務所
高橋:そうなんです。実は、「誰もやったことがないから、1階でやってみよう」という社内のアイデアから挑戦することになりました。1階にあると、お客様や協力会社の皆さんが気軽に立ち寄りやすく、自然とコミュニケーションも増えます。何気ない会話から生まれる気付きもあり、それがより良い建物づくりにつながっていると感じています。職人さんの休憩室は2階に設けることになりましたが、それ以上に現場事務所を1階に置くメリットは大きいですね。
編:現在はどのような工事が進んでいるのですか?
高橋:まさに今、建物の土台となる「杭打工事」が始まったところです。今回は全部で29本の杭を打ち込み、1日に5〜6本ペースで、およそ1週間かけて施工を進めています。杭は地中に埋まるため、施工後は目で確認することができません。だからこそ、私たち現場責任者がすべての杭の施工に立ち会い、位置や深さが設計どおりになっているかをミリ単位で確認します。さらに、写真撮影や記録も徹底して残していく、建物の品質を左右する非常に重要な工程です。

大きな重機がスタンバイ

杭を打つ場所の横には、掘削した土を流し込むための穴も設けられています
編:この現場だからこそ、特に気を付けていることはありますか?
所長:一番注意しなければならないのは、現場周辺の交通量と道幅の狭さですね。ここは倉敷美観地区にほど近く、週末や長期休暇になると観光客の車が一気に増えます。さらに、近くに野球部のグラウンドがあるため、学生さんの自転車もかなり多いんです。もちろん、近隣の方も歩かれていますから、狭い道路に大型トラックや重機を搬入するときは、本当に神経を使います。
編:それは図面を見ているだけでは分からない、現場ならではの難しさですね。
所長:そうなんです。例えば、「この日はコンクリートを打ちたいけど、週末は交通量が多いから日程をずらそう」といった判断は、実際に現場に入ってみて初めて分かることです。だからこそ、近隣の方々への挨拶回りはもちろん、資材や重機を搬入する際も事前の計画をしっかり立てています。搬入当日は、少し離れた場所で車両を待機させ、協力会社さん同士で電話連絡を取りながら、周囲の状況を確認して1台ずつ安全に誘導しています。
編:現場には新入社員も配属されているそうですね。最初はどのような仕事からまかせていくのでしょうか?

「業務一覧」を手に、現場で奮闘する新入社員
高橋:この現場では、まず「業務一覧」を渡して、その中からできることをどんどんまかせ、実際に経験してもらうようにしています。今回のような新築工事で、工事が始まる段階から現場に入り、現場事務所の立ち上げも含めて経験できる機会はなかなかありません。建物ができていく一連の流れを最初から見られることは、彼にとっても大きな経験になると思います。
所長:実際、やるべきことが明確にあって、分からないことや困ったことがあれば気軽に相談できる。そんなチームで助け合える環境があるからこそ、若手も焦らず、一つずつ経験を積みながら成長していけるのだと思います。しんどいだけの現場ではなく、純粋に「ものづくりって楽しい」と思ってもらいたいですからね。
編:これから新入社員の方がどのように成長していくのか、そして皆さんがチームでどのような現場をつくり上げていくのか、ますます楽しみになりました。完成まで引き続き追いかけていきたいと思います。
本日はありがとうございました!