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密着!荒木組の設計 第2回 ―設計の考え方―
こんにちは、アラキズム編集部です。前回の取材では、荒木組の設計はお客様のヒアリングから提案、設計、プレゼン、現場での確認まで、一貫して案件に携わることを伺いました。今回は、設計者の考え方や日々の仕事の進め方について、引き続き市原さんにお話を伺います。

市原さんの“プロの仕事道具”も見せてもらいました
編集部(以下、編):本日はよろしくお願いします。前回は設計の仕事の流れを中心に伺いましたが、今回は考え方の部分を深掘りしたいと思います。
市原さん(以下、市原):よろしくお願いします。
編:まず、設計の仕事の中では、建築物に必要な書類作成も担当されているのですよね。
市原:はい。設計図や提案書だけでなく、建築確認などに必要な申請書類作成も私たちの役割です。
編:お客様と直接お話する機会が多いということですが、見積りや金額面においても意識されるのですか?
市原:そうですね。見積り作成は積算課にお願いしますが、どの材料を使えばいくらかかるのか、工事内容を変更すると金額がどう変動するのかは把握します。打合せの場でお客様に説明する必要がありますから。

ノートには、コンセプトをカタチにするためのスケッチが残されていました
編:費用面の話までできるようになるには、時間がかかりますよね。
市原:はい。若手には図面や模型製作、申請書類作成などを一つひとつ経験してもらいます。そうした積み重ねで、少しずつ力をつけてもらえればと思っています。
編:市原さん自身は今、どれくらいの案件を抱えているのですか?
市原:進行中の現場が3件、企画提案中のものを含めると8件ほどですね。
編:そんなにたくさんの案件を!?設計者として設計の実務を進めながら、マネージャー的な役割もこなされているのですね。
市原:そうかもしれませんね(笑)。
編:設計において、外観と内部空間はどちらから考えるのですか?
市原:両方を同時に少しずつ考えます。外観ばかり理想を追求すると内部空間で無理が生じたり、その逆もあったりしますから。大事なのはまず「建物の機能性や使い勝手」をどうするかです。そこから外観と内部空間を整えていきます。


トレーシングペーパーを使い、アイデアを何枚も重ねながら練り上げていきます
編:設計者として一番楽しいと感じる瞬間はどのようなときですか?
市原:やはり提案ですね。お客様の要望を受けて、自分たちの考えを形にして伝える。未来につながる作業ですし、結果も明確に出るので、やりがいを感じます。
編:お客様と接する際に意識していることはありますか?
市原:お客様は図面だけでは完成形をイメージしづらいので、イメージ図や模型を用意します。会議中に説明図を描くことも多いですね。正面に座ったお客様から見て正しい向きになるよう、上下逆に説明図を描くこともありますよ(笑)。
編:それはすごい技術ですね!やはり設計者は空間認識力が高いということですよね。
市原:お客様に分かりやすく伝えられるよう、練習を重ねました。
編:それでスキルを身に付けられたのですね。では、印象的な案件や、お気に入りの建物はありますか?
市原:はい。施工は他社になったのですが、設計のみまかせていただいたコンペ案件など、心に残っているものもあります。
編:設計事務所としても勝負しているのですね。ちなみに、市原さんが設計者を目指したきっかけは?
市原:父が建築系の仕事をしているんです。その影響が大きいですね。
編:親子で建築の話をされることもありますか?
市原:現場の話などをすることはありますね。父から聞く話も勉強になります。
編:それはいいですね。本日もありがとうございました。次回は実際の現場でのお話も聞かせてください。
市原:ぜひよろしくお願いします。

スケッチ用や図面への指示書き用など、目的に応じてペンを使い分けています