施工現場
CLT工法の話を聞こう!(後編)
初めてのCLT工法を実施した荒木組。図面の調整やスケジュール管理など、チームワークで挑んだ現場メンバーの話が続きます(取材は2024年12月中旬)。(後編)
編集部(以下、編):今回の工事では、搬入された数多くの木材パネルの管理が必要だと思うのですが、何か苦労したことはありましたか?
W所長(以下、所長):組み立てに関しては図面に書いてある順番通りに、協力会社さんから搬入してもらうので、そこまで大変ではありませんでした。今(2024年12月中旬時点)、約300枚のパネルが組み立てられていて、最終的には約600枚搬入されてきます。

組み立てられている本館2階部分
S:基本的には図面に合わせて組み立てていけば問題ないのですが、どうしても人間が関わることなので、ちょっと図面と合わないというようなトラブルは発生しますね。こればかりは仕方がないのですが。
A:先日も所長が指示を出して、現場で修正していました。今回は最初に設計事務所さんからいただいた図面を、所長が確認して実用的な図面に引き直しています。
所長:細かいところなのですが、穴の位置などをより実用的なものに調整したりします。基本的には設計事務所さんの図面で問題ないのですが、現場でより効果が上がるようにするために、図面を全部チェックして、穴の位置や個数、機器の配置場所などを把握しています。
A:所長が全部チェックして、現場と照らし合わせるんですよ。
所長:そういう細かいところにこだわるところが、荒木組の良いところだと思います。あと、この現場3人は全員、施工図面を描けるということが大きな強みです。だから、意思疎通も容易で、効率的な作業ができますし、トラブルにも対応できると思っています。
S:クレーンでパネルを吊った時に、図面と違うことが分かって、自分たちで加工し直したこともありましたね。あと、この建物を建てる時の基礎工事で仕込むアンカーボルトが設置位置の精度を求められることも大変でした。
所長:何メートルもあるパネルを組み合わせて造るのですが、アンカーボルトの設置位置で許される誤差は4mmしかありません。それをAさんが徹底的にチェックして、アンカーボルトの位置を管理してくれました。
A:測量がんばりました(笑)。
所長:そのアンカーボルトの位置を最初は、今と違う方法で設置しようと考えていました。ただ、図面と現場を見比べて、直感といいますか、長年の勘といいますか、「計画通りに進めると大変なことになるな」と思ったのです。そこで、会社にも相談して、予定よりも予算は上がりますが、工事の品質が上がる今の設置方法にしました。これはファインプレーでしたね(笑)。
A:おかげで工事がスムーズに進むようになりました。予定よりも早く作業を終えることができそうです。

搬入された木材とアンカーボルト
S:最初、この現場の予定を聞いた時は、「お正月も休めないのではないかな?」と思ったのですが、しっかりと休めそうです。
所長:Aさんがこの現場に配属になってから、図面や工程をチェックして、無駄な時間が発生しないように、スケジュールを調整してくれています。これは僕にはできない。Sさんは木造建築のスペシャリストですし、この現場は3人のバランスが良い。これが今の品質と、予定よりも順調に進む工事につながっていますね。
編:今回のCLT工法を実践してみて、どう思いましたか?
所長:これからの時代、SDGsがもっと意識されていくと思います。だから環境に優しいCLT工法はこれからも増えていくのかなと思います。二酸化炭素の問題で、木造建築の良さも見直されていますしね。
S:今回使用している木材は、岡山県産の杉の木なんです。岡山の材料を使って造ることは初めての試みなのですが、地産地消ができることも魅力のひとつですね。
A:何十年後かに、またこの建物を解体することになっても、ここで使用したパネルは再利用されます。未来を考えると、これからもCLT工法とは縁がありそうです。余談なのですが、この現場に配属されてすぐの頃は杉の木と体質が合わなかったのか、くしゃみが止まりませんでした(笑)。1週間ほどで治りましたが(笑)。
所長:それは花粉症じゃなくて、ただの風邪だったのでは?(笑)杉の木を使用している現場では花粉症の人に影響があるのかはさておき、毎朝現場に来ると、木の良い香りがするので気持ち良く働けるという効果はありますね(笑)。