連載
建築施工現場の舞台裏に迫る ―医療施設増築工事編 Vol.1―
こんにちは、アラキズム編集部です。建築施工現場では、毎日さまざまな“判断”が積み重ねられ、建物が少しずつカタチになっていきます。しかし、その“舞台裏”を目にする機会はなかなかありません。そこで、アラキズム編集部では実際の建築現場をスタートから完成まで追いかける、初の試みに挑戦しました。
今回密着するのは、荒木組が設計施工を手がける医療施設の増築工事現場。設計施工ならではの連携も交えながら、建築工事がどのように進んでいくのかをお伝えします。
※関連記事:「密着!荒木組の設計 第3回」【密着!荒木組の設計 第3回 ―杭打ち現場で見た設計の真価― – ARAKIZM(アラキズム)(←LINKが開きます)】では、同工事の杭打ち確認作業について紹介しています。

今回から取材に対応いただく、(左から)前田所長、八木さん、山田さん
編集部(以下、編):完成まで取材させていただきます。よろしくお願いします。「密着!荒木組の設計」記事とも連動して、設計と施工のつながりも追いかけていきたいと思います。
3人:よろしくお願いします。
編:今回はどのような工事になるのでしょうか?

現場に整然と並ぶ杭。ここから建物づくりが動き出します
前田所長(以下、所長):広島県内にある医療施設の増築・改修工事です。初めに増築工事を行い、その後、改修工事に入るという流れです。
編:工事内容が決定してから、施工管理はどのような仕事から始まるのですか?
山田さん(以下、山田):工事に入るための事前準備からスタートします。
八木さん(以下、八木):図面が上がってきた段階で、工事全体の工程を考え、施工計画書を作成します。「準備8割、工事2割」といわれるくらい、事前準備を大切にしています。
編:施工計画書とはどういうものなのでしょう?
山田:設計図をもとに、工事内容に対して必要な人員や材料、時間を算出してまとめたものです。加えて、今回は現場が比較的狭いため、杭打ち機や仮設設備の配置計画、材料置場の確保、搬入車両の動線なども綿密に計画しました。
所長:重量物の楊重作業もあるので、使用する機械の能力チェックなど、安全に関わる確認も欠かせません。また、医療施設の増築工事なので、入院患者さんに配慮し、できるだけ低騒音の機械を選定しています。
編集部:考慮しないといけない範囲が広いですね。長い工期の中での工程管理は大変そうです…。
所長:完成までの工程の中で、どの作業に余裕を持たせ、どこを短縮できるか。その判断が施工管理の腕の見せどころなんです。
編:なるほど。では、ベテランの施工管理者は工程表を見て、「ここはもっと短縮できるな」とすぐに分かるものなのでしょうか?
所長:そうですね、そこは経験とセンスですね。今回は八木さんと山田さんが作成しましたが、私が少し修正を入れた程度で、おおむね問題のない工程表でした。

クレーンで吊り上げた杭を、正確な位置へと打ち込んでいきます
編:本日は杭打ち作業でしたが、この工程に向けてどのような準備をされましたか?
山田:まず、杭打ち作業が始まるまでに、1日で何本の杭を打てるかを計算しました。そこから杭の搬入と搬出のスケジュールを作成しました。そして、同時進行で基礎工事も関わってくるので、その段取りも考えました。
編:杭打ち作業だけでなく、その作業の前後のプロセスも考えるのですね。
八木:そうですね。ひとつの作業の前後にはたくさんの準備や調整があって、全体がうまくつながるように組み立てることが大切なんです。
編:工事が始まって、設計図や計画表通りに進まないこともあるのでしょうか?

杭打ち計画書を見せてもらいながら、作業のポイントを伺いました
八木:もちろん、あります。設計図が上がってきてから、施工側の視点で問題が発生しそうな点を事前に共有して解決します。その上で、現場で予定通りに進まない場合は、所長に相談します。現場で解決するのか、設計と相談して解決するのかは所長判断になります。
山田:今回は設計も荒木組なので、都度、共有や相談をしながら施工を進めることができています。社内だから相談しやすいですし、意思決定も早いですね。
編:なるほど。設計と“距離が近い”というのはいいですね。ところで、現場に塔のような大きな設備がありましたが、あれは何ですか?
八木:あれはサイロで、杭打ち時に使用するセメントを貯蔵するための設備です。

バラセメント車(中央の白い車両)からサイロ(右側のグレーの塔)にセメントを送っています
編:サイロを設置するには、かなり時間がかかりますよね?
山田:サイロは1日で設置できるんですよ。杭打ちの準備自体も1日で完了します。
編:準備にもっと日数がかかるのかと思っていましたが、意外とスムーズに進むものなのですね。それも、見えない「段取り」がどれだけ正確に考えられているかによるのかもしれませんね!ちなみに、今日の1本目の杭打ちは順調でしたか?
八木:はい、計画通りにいきました。
編:おぉ!段取りの賜物ですね!今日はありがとうございました。これからも建築施工現場の舞台裏を追いかけさせてください。
3人:よろしくお願いします!