連載
新人所長にインタビュー ―土木部 岡田所長編 第3回―
建設DXへの挑戦編②
「チャレンジする現場」をテーマに掲げている岡田所長。今回は「ウェアラブルデバイス」を導入して堤防工事に活用すると聞き、早速アラキズム編集部が取材しました。
編集部(以下、編):以前の取材で、「ウェアラブルデバイスを現場に取り入れたい」とおっしゃっていましたが、ついに導入されたのですね。
岡田所長(以下、所長):はい。測量業務に関わる時間を短縮あるいは省略できることを目指して導入しました。このデバイスを通して見ると、現実空間上に3Dモデルを投影することができます。こうした技術はMR(Mixed Reality:複合現実)と呼ばれています。
編:導入前に、見学者向けの体験スペースもつくられたのですね。

所長が用意したMR体験スペース

仮想空間に浮かぶボタンを押して設定をしているところです
所長:そうなんです。荒木組の社員にも体験してもらいたくて、いつでも見学できるようにしています。また、実施工に導入する前段階での精度検証用フィールドとしても活用しました。今回の機器は、実際の現場に導入されている事例がまだ少ないので、使用してみた感想や問題点をメーカーさんにフィードバックしつつ、検証を進めています。
編:具体的には、どのような作業に導入されているのですか?
所長:今回は、堤防基礎部分を保護するための根固め工における石積み作業で活用しました。石積みは、石工さんが石の大きさや角度を見ながら、現場で一つひとつ積み上げて形をつくる仕事で、まさに職人技ですね。
普段は「丁張(ちょうはり)」といって、図面に合わせて木杭や水糸を使い、施工の基準となる仮設物をつくり、それに合わせて石を積んでいきます。
編:丁張は施工管理の業務なのですか?
所長:はい。現場の社員が時間をかけて用意します。
編:かなり手間がかかる作業なんですね。
所長:そうなんですよ。そこで、デバイスを通すと、見ている現実空間の中に3Dモデルが投影され、それに沿って施工を行うことで設計図通りの仕上がりが実現できます。実用化が進めば、将来的には丁張作業を削減できるのではないかと考えています。

目の前の現実空間に…

デバイスを通すと、このような見え方になります(画像はイメージです)
編:すごい!こんな感じで見えるのですね。精度に問題はないのですか?
所長:誤差は2cmほどなので、基準をクリアしている工事は多いですね。
編:実際に現場では好評でしたか?
所長:実は…、そうでもなかったんです(苦笑)。
編:あら…、それはなぜでしょうか?


職人さんがウェアラブルデバイスを使用している様子
所長:精度や性能は問題ないのですが、石工さんが石を見るときの首の動きとの相性があまりよくなかったようです。それに、ある程度重さもあるので、長時間使うと疲れてしまうのもありますね。ただ、仕上がった部分の確認などでは活用できています。当初の目的には課題がありましたが、別の使い方ではしっかりと役立っています。せっかくなので、石工職人さんに直接聞いてみましょう。

図面通りに作業ができているか、デバイスを通じて確認中
編:お忙しいところ、すみません。ウェアラブルデバイスの使用感を教えてください。
石工職人さん(以下、職人):まず、近未来感に驚きました。高さもはっきり分かるので、ウェアラブルデバイスが普及すれば丁張はなくなるかもしれませんね。ただ、バッテリーを積んだバッグを肩から掛けるので、作業中に石にぶつけてしまいそうで気を使います。それと、石を砕く作業もあるので、跳ね返った石でグラスが壊れてしまいそうなのは少し不安ですね。
編:実際に使ってみないと分からない部分ですね。
職人:軽量化されたり、もう少し改良されたりすれば、もっと普及すると思います。
編:貴重なお話、ありがとうございます!
所長:今回の取り組みは、土木業界全体を見てもかなり挑戦的なことだと思っています。実際に使ってみて分かることが多く、とてもおもしろいですね。この声はメーカーさんにも届けていて、喜んでいただいています。この現場での経験が、今後の技術の進歩に生かされるとうれしいです。
編:本日はありがとうございました。次回の挑戦も楽しみにしています!