連載
「あたらしい施工管理プロジェクト」発起人、小林部長にインタビュー(前編)
建築部で作成が進められてきた「施工業務マニュアル(通称:業務一覧)」と「施工図チェックマニュアル」。これらは、現場運営や施工図確認に関する知識・ノウハウを標準化し、若手社員の早期育成と業務品質の向上を目指して整備が進められてきたものです。作成を担ったのは、現場の最前線で活躍する30代の中堅社員たち。20代の若手社員も巻き込みながら、約2年かけて形にしてきました。
今回からスタートする連載「あたらしい施工管理プロジェクト」シリーズでは、2つのマニュアルが誕生した背景や作成過程、プロジェクト運用状況についてご紹介します。第1回は、プロジェクトの発起人である、建築部・小林部長のインタビュー(前編)です!

小林部長に、じっくりとお話を伺いました
将来への危機感から生まれたプロジェクト
編集部(以下、編):今日はよろしくお願いします。まずは、「あたらしい施工管理プロジェクト」がどのような経緯で始まったのかを教えてください。
小林部長(以下、部長):よろしくお願いします。このプロジェクトの始まりは、2023年12月までさかのぼります。仕事納めを控えた時期に、建築部の中核を担う30代の社員たちへひとつのメッセージを送りました。内容はとてもシンプルで、「新たにプロジェクトを発足するので、メンバーとして集まってほしい」というものでした。
編:年末の慌ただしい時期に、突然の招集だったのですね。
部長:そうですね。年が明けた2024年1月、最初の会議でメンバーに伝えたテーマが「次世代へつなぐ新しい施工管理」でした。そして、その場で最初の宿題も出して、プロジェクトをスタートさせました。
編:突然の呼びかけに、メンバーの皆さんはどのような反応だったのでしょうか?
部長:正直、戸惑いが大きかったと思います(笑)。私がメンバーを決めて、突然メッセージを送りましたからね。「部長は一体何をやらせようとしているんだろう?」――そんな気持ちだったのではないでしょうか。
編:そもそも、なぜそのタイミングで新しいプロジェクトを立ち上げようと考えられたのですか?
部長:背景にあったのは、建設業界を取り巻く大きな変化です。担い手不足や技術継承の課題に加え、働き方改革への対応も求められる中で、「これまでと同じやり方では現場が回らなくなる」という危機感がありました。一方で、私たち50代の世代は、どうしても過去の経験や成功体験を基準に考えてしまいます。そのため、新しい発想や最新の手法を取り入れる機会が少なくなりがちです。だからこそ、柔軟な発想を持つ30代社員の力が必要だと考えました。
編:初期メンバーにはどのような方々が集まったのでしょうか?
部長:現場の第一線で活躍している30代の社員5名です。彼らに最初に出した宿題は、「自由形式で、新しい施工管理について考えたことをレポートにまとめる」というものでした。

当時の資料を見せていただきました
ゼロからイチをつくり出す難しさ
編:メンバーから提出された最初の宿題はいかがでしたか?
部長:正直に言うと、私が期待していたものとは少し違っていて…。自由形式だったので、細かくまとめる人もいれば箇条書きの人もいて、内容もさまざまでした。どこか当たり障りのないものが多くて、業務の延長線上の話ばかりという印象でした。
編:もっと新しい視点や踏み込んだ提案が必要だと感じていらっしゃったのですね。
部長:そうですね。だから「これでは今のやり方から脱却できていないし、新しい発想とは言えないよね」と、一度ダメ出しをしました。そこからは、メンバーたちもかなり悩んだと思います。
編:やはり難しかったのでしょうか?
部長:本当に難しかったはずです。建築の施工管理という仕事は、基本的には着工から竣工まで、明確な図面や工期があって、その環境の中で自分の与えられた役割を果たしていくという世界です。営業職のように「ゼロから顧客を見つけて、仕事をつくり出す」というような作業には、彼らはあまりなじみがありませんから。しかも彼らは現場の主力として活躍しながら、家庭を持つ社員が多い世代です。限られた時間の中で現場業務と並行して取り組み、なおかつ完成形も見えない状態でしたから、精神的な負担は決して小さくなかったと思います。
プロジェクトが動き始めた瞬間
編:プロジェクトリーダーをあえて固定しなかったそうですが、その後どのように進んでいったのでしょうか?
部長:誰がどう動き出すか、一歩引いて見守っていたのですが、メンバーの中で最も若手の社員が自然と中心になっていきました。彼が「まずはこの方向性で進めましょう」、「次回までにここを整理しましょう」と率先して意見をまとめ、取りまとめ役を担ってくれたんです。さらに、プロジェクトメンバーではない社員も途中から自主的に参加し、資料作成や提案書作りをサポートしてくれるようになりました。
編:徐々に形になっていったのですね。
部長:そうですね。その頃には、「施工管理アプリの導入」や「AIやロボットの活用」、「リモート管理」、「工期短縮のための新しい仕組み」など、既存の枠にとらわれないアイデアが出てくるようになりました。
編:現場の働き方そのものを見直すような意見も出ていたのですね。
部長:そうなんですよ。実際に実現したものもあります。例えば、熱中症対策として、夏場の現場にキッチンカーを呼んで、協力会社の職人さんやお客様の職員の方々にかき氷を振る舞う取り組みや、日焼け止めの支給なども、その中から生まれたアイデアです。

現場で働く社員や協力会社さんから好評だった「かき氷イベント」。この現場では近隣の方々にも振る舞われました
編:そこから「マニュアル作成」には、どのようにつながったのですか?
部長:実は、「マニュアル作成」については私から少しお願いした部分もありました(笑)。ただ、テーマとして掲げたことで、プロジェクトは意外な方向へ広がりを見せたんです。
自主的な挑戦が生んだ好循環
編:意外な方向、と言いますと?
部長:私が指示したわけではないのですが、30代のメンバーが自ら20代の社員たちを巻き込み、分科会のような独自のワーキンググループを立ち上げたんです。そして、より実務に即したマニュアルを作るために、30代の社員が「施工図チェックマニュアル」、20代の社員が「施工業務マニュアル」を担当するという形で役割分担を進めていきました。
編:会社からの指示ではなく、自発的に組織が広がっていったのですね。
部長:そうなんです。「この項目は○○さんが担当する」、「この工事はこの人が詳しい」といった形で役割分担をしながら、メンバーそれぞれが持つ知識や経験を持ち寄って内容をつくり上げていきました。建築部の社員は普段、それぞれ異なる現場で働いているため、どうしても横のつながりが希薄になりがちです。そんな彼らが、このプロジェクトをきっかけに自主的に集まり、会議を重ねながら互いの現場での取り組みやノウハウを共有するようになりました。その結果、「同期や同世代に負けたくない」という良い意味での刺激も生まれ、自然と切磋琢磨できる場になっていったんです。私はその様子を、とても良い変化だと感じていました。
施工管理の未来を考えるところから始まったこのプロジェクトは、やがて30代社員だけでなく20代社員も巻き込みながら、大きな広がりを見せていきました。後編では、マニュアル作成がどのように進められたのか、そして、小林部長がこのプロジェクトに込めた思いをご紹介します。