連載
「あたらしい施工管理プロジェクト」スタートメンバー座談会。現場経験を、次世代へ
建築部の小林部長の声かけをきっかけにスタートした「あたらしい施工管理プロジェクト」。先日公開した記事(前編:https://arakizm.com/ncmp-1/)(後編:https://arakizm.com/ncmp-2/)では、その発足の経緯や目的をご紹介しました。今回はプロジェクト立ち上げ時に集まった5名のメンバーのうち、板村さん、森木さん、河内さん、岡崎さんの4名が座談会に参加(メンバーの吉田さんは、現場対応のため欠席)。「本当に形になるのだろうか」――そんな手探りの状態から始まった挑戦は、やがて若手の成長や技術継承につながる取り組みへと発展していきました。プロジェクトの裏側を、当時を振り返りながら語っていただきました。

(左から)森木さん、板村さん、岡崎さん、河内さん
編集部(以下、編):小林部長から直々に5名(※今回は4名が出席)に声がかかったと聞きました。最初に話を聞いたとき、皆さんはどのように感じましたか?
河内さん(以下、河内):正直に言うと、最初に話を聞いたときは少し戸惑いがありました(笑)。それぞれ担当現場を抱えて忙しい時期でもありましたし、「また仕事が増えていくのかな」というのが率直な気持ちでしたね。最初に部長から「何か新しいことを考えてみてくれ」と言われて、手探りでアイデアを箇条書きにして提出したことを覚えています。
岡崎さん(以下、岡崎):ところが、僕たちの案を見た部長から「こんなのは想像の範囲内だ。もっと突拍子もないことを考えろ」と一蹴されてしまいました(笑)。そこからですね、みんなのスイッチが入ったのは。ちょうど異常気象への対応も大きな課題になっていたので、現場で働く人たちの士気を上げるために何かできないかと考え、夏場にキッチンカーを呼んで、現場へかき氷を届ける企画を提案しました。
河内:今でこそ毎年恒例になっている夏のかき氷イベントですが、自分たちのアイデアが会社に認められて実際に反映されたときは、達成感というか、大きなやりがいを感じましたね。
編:なるほど。皆さんのアイデアが形になったことで、手応えも感じられたんですね。その後は、実務的な「マニュアル作成」へと取り組みが発展したそうですが、その経緯を教えてください。
板村さん(以下、板村):当初は、小林部長の助言もあり、若手向けに業務内容をリスト化した「業務一覧チェックリスト」のようなものを作成していました。でも、ある程度形になったところで、「せっかく時間と労力をかけて作るなら、もっと現場に直結した、自分たちだからこそ作れる付加価値のあるものにしたい」と思ったんです。そこで行き着いたのが、誰もが一番苦労する「施工図※チェック」のマニュアル化でした。
※施工図:実際に工事を行うための詳細な図面のこと。
森木さん(以下、森木):実は、現場で使う自主検査リストのような資料は社内にたくさんあります。でも、若手が施工図をどう読み、どこを確認すればいいのかを体系的にまとめた実務マニュアルはありませんでした。これまでは完全に属人化していて、先輩のやり方を見よう見まねで覚えるか、居残りして地道に覚えていくしかなかったんです。

施工図を読み解く力が、現場監督の力量を左右します
編:皆さん自身も、若いころは施工図を読み解いたり、チェックしたりすることに苦労されたのでしょうか?
河内:苦労どころか、全員もれなく失敗を経験しています(笑)。施工図のチェックミスで寸法が合わず、工程が完全に止まってしまったり、協力会社さんに大きなご迷惑をかけてしまったり…。コンクリートを打設した後にミスが発覚して、自分で壊してやり直したときの、あの自責の念というか、「ヤバい」という感覚。もちろん所長にはすぐにバレて怒られるし(笑)。でも、そうやって失敗を経験しながら図面の読み方を身に付けていくのが、これまでの育成スタイルだったと思います。
森木:ただ、今の若い世代に対して、「背中を見て覚えろ」、「失敗して学べ」という育成だけでは難しい時代になってきたと感じています。働き方も変わっていますし、限られた時間の中で効率よく技術を身に付けられる環境をつくる必要があると思いました。
板村:実際、現場ではタイミングによって、所長や職人さんに「分からないので教えてください」と声をかけづらい場面もあります。だからこそ、ひとりで悩んで時間を費やすくらいなら、最初から学ぶための土台を整えてあげたい。そのためのマニュアルが必要だと思ったんです。

この日も、マニュアルの改善に向けた打合せが行われていました
編:自分たちが苦労したからこそ、今の時代に合った形で知識を引き継ごうとしているのですね。具体的にはどのようなマニュアルを作成しているのでしょうか?
岡崎:まず基礎や鉄骨といった分野ごとにチームを分けて、「ここを間違えると工程が止まる」、「職人さんへ渡す前に、ここは必ず確認する」といったポイントをまとめた、実務に特化した「施工図チェックリスト」を約1年かけて作成しました。実際に自分の現場が始まるタイミングで、メンバー全員でマニュアルのプロトタイプを試しながら改善を重ねてきました。ただ、チェックリストの文字だけでは、初めて図面に触れる若手には伝わりにくい部分もあります。そこで今期は、具体的な「納まり図(施工の詳細を示した図面)」も組み合わせながら、誰が見ても理解しやすいビジュアル付きのマニュアルへブラッシュアップしていく予定です。
編:これが完成すれば、若手だけでなく、教える側の先輩や所長の負担軽減にもつながりそうですね。
河内:そうですね。ただ知識を覚えるためのマニュアルではなく、若手一人ひとりが主体的に考え、責任を持って仕事に取り組めるようになる。そのきっかけとなるツールにしたいですね。
岡崎:また、同時に必要だという声が上がった「施工業務マニュアル」の作成については、あえて僕たちよりひとつ下の世代にまかせることにしました。今まさに現場の最前線で業務を担当している世代だからこそ、本当に現場で役立つマニュアルを作れると思ったからです。ぜひ、彼らの話も聞いてみてください!
手探りで始まったプロジェクトは、今では建築部の技術を次世代へつなぐ取り組みへと発展しています。そして、その思いは、さらにひとつ下の世代へと受け継がれています。
次回は、「施工業務マニュアル」の作成を担う若手メンバーにも、その思いや取り組みについてお話を伺います。