連載
広島・廿日市、新たな仲間とつくる木造建築。(前編) ベテラン所長が現場でつなぐ技術
岡山県内を中心にさまざまな建物を手がける荒木組。現在、そのフィールドを広島へと広げています。今回訪ねたのは、広島県廿日市市で福祉施設の建設を進める現場。建物は、「テクノストラクチャー工法」を採用した木造建築。現場を率いるのは、これまで数々の建築現場を担当してきたベテラン・鷹取所長です。
岡山を離れ、広島で初めて出会う協力会社さんや職人さんたちと、どのようにひとつの建物をつくり上げていくのか。木造ならではの施工にどう向き合い、若手社員に何を伝えていくのか。広島での現場づくりを通して見えてきた、鷹取所長の仕事への向き合い方に迫ります。

広島の現場事務所にお邪魔しました!
編集部(以下、編):鷹取所長、お疲れさまです! 早速ですが、今回手がけている建物について教えてください。
鷹取所長(以下、所長):福祉施設を建設しています。今回の建物は「テクノストラクチャー工法」を採用した木造建築で、なおかつ法的な制約も多い「準耐火構造」です。
編:「木造」と聞くと住宅をイメージする人も多いと思いますが、福祉施設も木造で建てられるのですね。
所長:そうですね。今回のような建物では、構造だけでなく、部材同士をどう取り合わせ、きれいに仕上げるかという「納まり」にも技術が求められます。一つひとつの納まりをしっかりと確認しながら進めていく必要があり、なかなか手応えのある現場ですよ。
編:今回は木造建築に取り組む一方で、岡山を離れ、広島での施工でもあります。現場づくりという点では、いつもと違うことはありますか?
所長:一番の違いは、協力会社さんや職人さんを一から探して、関係性を築いていくことです。岡山ではこれまで一緒に仕事をしてきた方が多いですが、広島では初めてお会いする方がほとんどです。最初はどんな会社さんなのか、お互いに手探りの状態からのスタートになります。
編:初めての職人さんと接する際、気を付けていることや意識していることはありますか?
所長:いやぁ、そこまで特別なことはしていませんよ(笑)。変に堅苦しくするのではなく、自然体でコミュニケーションを取るようにしています。相手の反応を見ながら、お互いに「この人なら信頼できる」と思える関係をつくっていくことが大切ですね。例えば、今回の塗装会社さんは、岡山の協力会社さんを通じてご紹介いただきました。そうしたつながりがあると、初めての方でも安心して話を進められます。こちらでも、一つひとつ新しい関係を築きながら、「一緒にいい仕事をしよう」と思える現場をつくっていきたいと思っています。

取材中も、協力会社さんと自然に言葉を交わす鷹取所長
編:今回は既存の福祉施設と同じ敷地内での工事でもあります。現場を進めるうえで、特に意識していることはありますか?
所長:施設を利用されている方や、職員の皆さんの安全と安心が最優先です。これまでも同じような施設での施工経験があるので、そのあたりの配慮は自然と身についています。しっかりあいさつをして、施設の皆さんと日頃からコミュニケーションを取ることも大切にしています。入居されている方が「どんな建物ができるんだろう」と、楽しみに見に来てくださることもあるんですよ。そうやって完成を楽しみにしてもらえるのは、やっぱりうれしいですね。
先日、現場でかき氷を振る舞うイベント(当日の様子はこちら→https://arakizm.com/summer-26/)を行なったときも、施設の皆さんに喜んでいただきました。工事だけでなく、こうして皆さんと交流できる機会も大切にしたいですね。

施設のすぐそばに構える現場事務所。施設の皆さんの安全に配慮しながら、工事を進めています
編:今は、若手社員と2人で現場を担当していると伺いました(※取材当時。現在は3人体制)。取材中も、鷹取所長が若手社員をフォローする姿が印象的でした。
所長:今回一緒に担当している若手もすごくがんばっていますよ。ただ、現場全体をひとりで仕切るのはこれからですから、図面のチェックなど、必要なところは私がフォローしています。今の若い社員を見ていて思うのは、「設計図から完成形を思い描く力」を身につけてほしいということですね。
編:「設計図から完成形を思い描く力」、ですか?
所長:最近はCADなども発達しているので、どうしても「でき上がった施工図」を見て、仕事を進めがちになります。でも、本来は元となる設計図の意図をきちんと理解したうえで施工図を見ないと、建物全体で見たときに、納まりのずれや不具合につながってしまいます。僕らが若手の頃は、手書きで図面を描きながら、「ここをどう納めるか」を自分で考えて覚えてきました。図面を一度でも自分で真剣に描いてみると、頭にしっかり残るし、現場の納まりも見えるようになります。
編:鷹取所長自身が経験の中で培ってきた「図面を見る力」を、今度は若手に伝えているのですね。
所長:そうですね。最初から全部できるわけではないですから、今は僕が確認しながら一緒にやっています。でも、一つひとつの現場で得た経験を、ただ「一緒にやった」で終わらせず、自分の糧にしてほしい。5年後、10年後に、会社を背負っていける技術者になれるよう、現場を通して「図面の見方・考え方」をじっくり伝えていきたいですね。
編:目の前の建物をつくるだけでなく、次の現場を担う人も育てていく。鷹取所長のお話から、そんな所長としての役割も見えてきました。最後に、これからの工事に向けた意気込みをお願いします!
所長:地域によって仮設資材の規格が少し違ったり、仕事の進め方にも違いがあったりと、広島に来たからこその発見はいろいろあります。でも、僕らがやるべきことはひとつです。「どんな条件であっても、きちんと建物を納めること」。広島の現場でも、これまで大切にしてきた品質を守りながら、完成したときに喜んでいただける建物をつくりたいですね。最後まで安全第一で、しっかり現場を進めていきます!
編:完成が楽しみですね。鷹取所長、ありがとうございました!
広島で、新たな協力会社さんや職人さんたちと取り組む木造建築。環境が変わっても、変わらない仕事への姿勢。そして、これまで培ってきた技術を、次の世代へつないでいく。今回の取材では、そんな鷹取所長の現場づくりに触れることができました。そして後編では、鷹取所長とともにこの現場を担当する若手社員に密着!木造建築の現場で何を学び、どのように仕事に向き合っているのか。今度は若手社員の目線から、広島・廿日市の現場を追いかけます!

広島県廿日市市で建設が進む、木造の福祉施設